第100章 恋した記憶、愛した事実《21》家康side
「…………何が面白いんですか…」
「くくく…こちらの話だ。ところで、記憶は戻ったのか?」
「…………戻ってません…」
「おや?お前の反応を見ていると、もう戻ったのかと思ったが………くくく…そうか。」
「…………何笑ってるんですか……」
「いや。まだ戻っていないなら、あの手この手で思い出させようと思ってな。その時のお前の反応が楽しみだ。くくく……」
想像しているのか、ニヤニヤと笑う光秀さん。
「(………悪趣味…)」
口には出さずに、俺は心の中で悪態をつく。
光秀さんのことだから、かなりすごいことをしてきそうで、どんな手を使うのか想像もしたくない。
「まぁ、冗談はさておき、お前に作ってもらいたい薬がある。諜報の際に使用したいのだが……」
急に仕事の話になり、急いで頭を切り替え、光秀さんの望む薬の内容を聞く。
「…………わかりました。一度試作してみます。」
「頼んだぞ。……あぁ、それと家康。」
「?何ですか?」
光秀さんが立ち止まるから、俺も自然と立ち止まり、光秀さんの言葉を待つ。
すると、今度は不敵に笑って
「せいぜい気を付けろよ。足元や頭上、背後にな?」
「は?」
光秀さんの言葉を聞いて、かなり間抜けな声が出た。
くくく…と笑って、光秀さんは先に広間へと歩いていく。
「(……もしかして、あの手この手のことか……?)」
光秀さんの考える『あの手この手』は、全く予想が出来ないが、ただただ……いい予感はしない。
これから起こることに憂鬱になり、俺はその気持ちを、全て吐き出すように息を吐いた。