第100章 恋した記憶、愛した事実《21》家康side
天主を出て、広間に向かっている間、俺は信長様に言われたことを、ひたすら考えていた。
『貴様はどうしたい』
俺はどうしたいのか………
とにかく記憶を戻したいけど………
「(信長様が言っているのは、こういうことじゃない気がする……)」
たぶん、あの娘とのことだ…。
「(……だけどどうしたい。って言われてもな……)」
辛そうで悲しそうな表情のときは、頭が痛むし………
微笑んだりしたときは、胸が大きく拍動して………
『陽菜を本気で落としにかかるからな』
政宗さんの言葉に、胸がざわめいて……
あの娘と関わっていた一週間ぐらいの間に、感じたことを思い出していると
「陽菜様!そんなことは、私たちがしますのでっ…!!」
「………?」
反対側の廊下から聞こえた女中の声に、俺は声の方へ顔を向けると、女中が数人と、襷掛けをしているあの娘の姿。
「皆さんの邪魔は絶対にしないので!それに人手が多い方が、早く終わりますから!!」
「ですがっ………」
「ご迷惑はかけません!皆さんのお手伝いさせてください!」
お願いします!と頭を下げて、女中にお願いしている姿。
その姿に女中たちも折れて、こちらこそお願いします。と礼を言って、桶を陽菜に渡した。
「じゃあ、私あっちの方をしてきますね!」
すたすたすたすた…………
桶を持って早歩きで、廊下を歩き、廊下の角を曲がっていった。