第99章 恋した記憶、愛した事実《20》家康side
「………どういう、こと…だ……?」
文を読んで、思わず出た言葉。
「(もしかして、俺とあの女は……)」
恋仲だったのか…………?
なら、あの見慣れない家具や小袖は、あの女のもので、俺たちは一緒に暮らしていたのだろうか……
あの女とどういう風に、この部屋で過ごしていたのか…………
どんな話をしていた?
笑っていた?
喧嘩もした?
傷付けた?
悲しませた?
そして……
愛しあった……?
だけど、自分がどんな風に接していたのかは、やはり思い出せない。
もう一度、文を見て、最後に綴られた言葉を心の中で読む。
『家康、大好きだよ!陽菜』
あの女が『好きだ』と伝えた、俺宛の文だけど………
俺が知らない『俺』に送られた文。
それがどうしようもなく………
………いらいらする…
そう思った自分に驚き……
俺は文を片付けた。