第98章 恋した記憶、愛した事実《19》
だけど………
「(ギュウギュウに並べすぎたかな………器が取りにくい……)」
失敗したとき用に、でも成功したら皆に食べてもらう用にと、二つの意味を兼ねて多めに作っていたから、器と器の間に、手を入れる隙間がない。
なかなか器が取れずに、モタモタしていると
「大丈夫か?取ってやろうか?」
政宗の少し心配するような声。
お願いしようかと思ったけど、なんとか器の縁を、掴めそうだったから
「だ、大丈夫!もう少しで………」
政宗からの助け舟を断り、器の縁を布巾越しで掴んで、落とさないように鍋から出そうと、上に持ち上げると
……ジュッ…
「っ!!!熱っっ!!」
ギュウギュウに並べていたから、持っていた器のすぐ横の器の縁に、小指が当たり
…ガシャンっ……!!!
咄嗟に、手を引っ込めようとして、持っていた器を離して、鍋のなかに落としてしまった……。
「!?馬鹿!早く冷やすぞ!!」
政宗に火傷した側の手首を掴まれ、洗い物用に置いていた水を張っていた桶に、勢いよく手を浸けられた。