第98章 恋した記憶、愛した事実《19》
秀吉さんは懐から、手拭いを取り出して、水浸しになった廊下を拭いていく。
「ごめんなさい…秀吉さん……。お仕事中なのに、手伝わせちゃって……。しかも手拭いも使わせちゃった……」
「気にするな。一人でするより、人が多いほうがすぐ終わる。にしても……陽菜……最近無理しすぎじゃないか?顔色も少し悪いぞ。」
「…う……それは、その………」
確かに家康の包帯が外れてから、毎日が手持無沙汰になっていて……
世話役の仕事だけでなく、女中さんにお願いして、お城の掃除の手伝い、食事の手伝いをさせてもらったりしてるから、朝から晩まで働きづめで、自分でも無理してるのはわかってるんだけど……
本当は、お姉ちゃんに会いに行きたいけど、夜中の授乳で寝不足みたいだし、休めるときに休んでほしくて、会いに行くのも今は少し控えてるから、余計にすることがない……。
「……女中たちの手伝いも、駄目なわけじゃないが、夜はしっかり寝ろ。少しだけ隈も出来てるぞ。」
「え?嘘……」
「ここの片付けが終わったら、今日は休め。文を届けてもらう用事とかも特にないからな。」
「…うん……わかった……。秀吉さん、心配かけてごめんなさい…。」
「ん、気にするな。そうだ。香菜にも気を使わず会いに行ってやれ。話し相手がいないからって寂しがってたぞ。」
「そうなの?でも、お姉ちゃん寝不足なんでしょ?」
三時間おきに授乳するから、睡眠時間は格段に減った。って前に会いに行ったときに言ってたし……