第97章 恋した記憶、愛した事実《18》家康side
「(……そういえば出来事とかは、話していたけど、あの女自身のことを、詳しくは聞いてないような…)」
思い返せば、いろいろ質問していた内容は、あの女が関わった出来事とかばかりで……
料理が出来るのも、今、政宗さんの言葉で初めて知ったし………
安土に来る前はどこに居たのかも……
何も聞いてない……
「(秀吉さんから、知りたければ本人に直接聞け。って言われてたのに……なんだ……?)」
政宗さんから、あの女のことを聞かされたことが、妙に気持ちをざわつかせて、なんだか落ち着かない。
ポンっ……
「……おい。家康。ぼーっとして、大丈夫か?」
「……っ…!」
政宗さんに肩を叩かれて呼ばれるまで、意識がかなりあの女に向いていたことに気づく。
「………大丈夫です…」
「…そうか。……なぁ、家康」
政宗さんが俺を呼び、顔を政宗さんへと向けると
「早く思い出さねーと、本気で陽菜を落としにかかるからな」
政宗さんの真剣味を帯びた、青い瞳が俺に突き刺さった。