第97章 恋した記憶、愛した事実《18》家康side
「そうなったら、陽菜にも手伝ってもらうか。あいつに手伝ってもらうと、かなり助かるしな。」
どうやら快気祝いすることは、政宗さんのなかでは決まっているみたいだ。というより……
「……なんであの女に手伝わすんですか?」
家臣も後ろにいるし、小声で政宗さんに聞く。
いつもは政宗さんが殆ど作っているのに……
俺の質問に答える前に政宗さんは、家臣に顔を向け、先に行くように伝えると、俺に向き直り立ち止まる。政宗さんが立ち止まったことで、俺も自然と立ち止まった。
「お前、まだ陽菜のこと思い出してないんだな」
政宗さんの鋭い視線が、俺に突き刺さる。
「……そうですね…まだ思い出してません……」
「まさかとは思うが……陽菜が手当てしてる間、何も喋ってねーのか?」
「二人のときは…まぁ、質問とかしましたけど……誰かいるときは特には話してません。」
といっても、たいしたことは話してない。
信長様を助けた縁で、安土に居させてもらうようになったこと。
居させてもらって、何もしないのは申し訳ないからという理由で、織田軍の世話役になったこと。
戦に同行することになったから、俺に薬学のことを教わったこと。
その戦のことも聞いたし……
あとは、信長様を暗殺しようとした犯人のことも聞いた。
秀吉さんの祝言の話も聞いたし……
話してもらった内容を思い出していると、あることに気づく。