第96章 恋した記憶、愛した事実《17》
すると
「家康様、そろそろ軍議のお時間になります。」
「「…っ!?」」
襖の向こうから、家臣さんの声が聞こえ、私たちは同時にハッとして……
家康の手が私の頬からゆっくり離れていく……
「……すぐ行く」
家臣さんに一声かけると、文机の上に置いていた数冊の書物を手に取り
「はい」
私に渡してきた。
「え?えっと……?」
キョトンとしながら、書物を受けとると
「あんた、織田軍の世話役なんでしょ。俺今から軍議に行くから、書庫に戻しておいて。」
「へ?…あ、はい…」
まさかの仕事を頼まれた。
「それじゃあ、よろしく」
「あ、あの!」
言いながら立ち上がって、部屋を出ていこうとした家康を、慌ててひき止める。
「……なに?」
「…あの……家康、さんが時間あるとき……またお話してもいいですか…?」
「なんで?」
「えと……話していたら、何か思い出すかもしれないから…です…。」
段々と語尾が弱々しくなっていき、自然と顔も俯いていく。
家康は、関わりたくないと思っているかもしれないのに、こんなことされたら迷惑なのかもしれない。
やめとこう。と思い、口を開こうとしたとき