第96章 恋した記憶、愛した事実《17》
「………なんでそんなに不安そうな顔してるわけ?」
「え?」
家康の声に反応して、パッと顔をあげる。
不安に思っていたことが、知らず知らずのうちに顔に出ていて、いつの間にか顔を俯けていたみたい。
「自分の時間を有意義に過ごせるんだから、喜んだら」
「(……喜べないよ……)」
家康と過ごせないなら………
家康の記憶が戻らないなら………
素直に喜べない……
「………そういう顔……」
「…え……」
家康の手が私の頬に触れて、目を見開くと
「あんたのそういう顔見てると……俺は…」
…家康………?
家康の顔がどことなく苦しそうで、その表情を見ていて胸が苦しくなる……