第95章 恋した記憶、愛した事実《16》家康side
「…え、えぇっと……?」
なんて答えていいのかわからないのか、きょとんとした様子。
確かに、「何者?」なんて聞かれたら、答え方に悩むか……
「…あんたはいつから安土にいるの?ここ最近だよね?」
まずいつから安土に来たのか、安土に来た理由などを一つずつ聞いていく。
「……ふーん……信長様を助けた縁で安土にね……見た感じ弱そうなのに。」
「は、はぁ……まぁ、あのときは勢いで助けたんで……」
「(勢い……ねぇ……。)」
考えなしの行動だったってわけか……
だけど、その信長様を殺そうとした奴はどうなったんだ……?そんな話、秀吉さんたちも話していなかったけど……その出来事が一年半前のことなら、もう解決しているんだろうか……?
「……あの……肩と頭の手当て…しましょうか……」
「え……あぁ。そうだね。」
考えこんでいて忘れていたけど、手当ても途中のままだった。手当てをお願いし、また俺は考える。
「(……一年半前……)」
そのぐらいからの記憶が確かにない。必死に思い出そうとするが、そうすると頭が少し痛みだして、思い出すことができない。
いつの間にか手当ても終わっていて、この女が片付けをしているのを、ただ見ている。
「(気になってることは聞いとくか……)」
「ねぇ…。なんであんたは、俺に関わろうとするの」
もう一度質問した。