第95章 恋した記憶、愛した事実《16》家康side
「その辺に置いといて。まだやることあるから後で食べる」
御膳を置いたら、すぐに出ていってもらおうと、女の方を見向きもせずに、文机に向かって座る。
「え?…ぁ……はい…。えと……包帯の交換は……」
そうだ……。手当てはこの女がするんだった。また部屋に来させるのは二度手間だし面倒……。先に終わらせたら、今日はもう来ないだろう。
そう考えて、先に手当てをお願いすると、快く返事をしてきた。
御膳を置いて準備をし、手を清めたら、包帯を外していって、薬を塗りはじめる。
が…………………
「「…………………」」
「(……なんか居心地が悪いな……)」
今朝は、秀吉さんと政宗さん、三成の馬鹿も居て、あの三人が勝手に話してたから、話さなくても大丈夫だったし……いざ二人になると気不味い……
このまま黙ってやり過ごすか……と思った瞬間
―――
『陽菜自身について知りたかったら、お前が陽菜に直接聞け。俺らが話してやれるのは、陽菜に関わっていることだけだ。』
『お前と陽菜を関わらせようとする理由は、今は言えないが、しっかり陽菜と向き合って、陽菜のことを知っていけ。』
―――
秀吉さんに言われたことを思い出し……
「ねぇ。聞きたいことあるんだけど」
口を開いた