第95章 恋した記憶、愛した事実《16》家康side
「…何してんの……」
だいぶ変だけど、退いてもらわなければ、部屋に入れない。仕方なく声をかけると
ビクぅぅっっ!!!
声をかけたことに驚いたのか、大きく肩が跳ねて、勢いよく顔を後ろへ振り向いてきた陽菜。
「ああああああのっ!!しょっ、しょ食事を、ももも持ってきてっ!!」
かなり焦って吃りながら身体も俺の方へ向けて、御膳を勢いよく見せてくる。
あまりにも必死になっているから、その姿にちょっと驚く。
「…………あぁ……どうも……」
一応、礼を言うと、陽菜はゆっくりと顔を俯けてた。
「(……もしかして今朝、秀吉さんが言ったこと実行している…?)」
怪我の手当てだけでなく、身のまわりの世話までしろ。と信長様に命じられたと言っていたけど……
これぐらいのことなら、女中にさせればいいのに……と思う。まぁ、別にいいけど……それより……
「……そこに突っ立ってたら邪魔で、部屋に入れないんだけど」
「あっ!ごっ、ごめんなさいっ!」
俺の言葉でパッと顔をあげて、俺が部屋に入れるように、すぐに横に移動したから、俺は襖を開けて、部屋に入る。
だけど、部屋に入る様子のない陽菜。
部屋に入らないのなら、何のために、御膳を持って部屋まで来たんだ……
「……何してるの。さっさと部屋に入れば。」
「えっ?……あ……失礼します……」
部屋へと入ってきた。