第94章 恋した記憶、愛した事実《15》
「…え、えぇっと……?」
まさか「何者?」って聞かれるとは思わなかったから、なんて答えていいのかに悩む。
「…あんたはいつから安土にいるの?ここ最近だよね?」
「あ、はい……えっと……一年半ぐらい前から…です……」
「そう。安土に着た理由は?」
「着た理由……えっと…たまたまというか、流れというか……」
「は?何、それ。はっきり言いなよ」
「……う…えっと……お姉ちゃんと出掛けてたときに……」
私の答えに、訝しげな表情の家康。
何もかも正直に話したいが、流石に今の家康に、現代から来たことは言えない気がして、それだけは伏せて家康に話す。
「……ふーん……信長様を助けた縁で安土にね……見た感じ弱そうなのに。」
「は、はぁ……まぁ、あのときは勢いで助けたんで……」
現代から来たことだけ伏せて、安土に着た経緯を話すと、家康も少し納得したのか、この二日間私に向けていた警戒心は、少しだけ解けた。
安土に着た経緯を話したら、何かを考えているのか、会話はぴたりと止まっている。
「……あの……肩と頭の手当て…しましょうか……」
久しぶりに家康とここまで話せたから、嬉しいのは嬉しいけど、手当てもまだ途中だし、食事も、仕事も終わってない。
「え……あぁ。そうだね。」
そう言って、手当てを再開させてもらった。だけど、先ほどみたいな会話はなくなり、また無言の静かな時間が訪れた。
手当ても終わって、片付けをしていると……
「ねぇ…。なんであんたは、俺に関わろうとするの」
家康から、また質問された。