第93章 恋した記憶、愛した事実《14》家康side
三成の声が聞こえて、すぐに襖が開くと、三成たちだけでなく、政宗さんまでいる。
「おう、おかえり。」
「……人増えてるし……」
秀吉さんは、政宗さんまで増えたことには、特に気にすることもなく、片手を上げて、三人に声をかけている。そして俺は………
「(……どれだけの人がこの部屋に集まるの……)」
静かな時を好む俺からしたら、部屋に人が集まり煩くされるのは、落ち着かない。煩くなるであろう状態に、眉間に皺を寄せて、ボソっと呟いた。
「んな嫌そうな顔すんな。飯作ってきてやったんだぞ。ほら、陽菜。家康の手当てしろ。飯が冷めちまう。」
「あ、うん……失礼します……」
昨日より明らかに大きい重箱を俺に見せると、女に手当てするように言う政宗さん。
俺の褥に近づくと、桶をそっと置いて、昨日みたいに準備をしだし、俺の腕に巻かれている包帯を外すと、ひと声かけて薬を塗っていき、包帯を丁寧に巻いていく。
「(……やっぱり丁寧で手際がいい…。それに……)」
手の平から「温もり」が伝わってくる。
そして、この「温もり」が懐かしく感じる。
だけどなんで懐かしく感じるのか……いつ、この「温もり」を知ったのか……
思い出そうにも、全く思い出せない。
俺がこの「温もり」について考えている間に、全ての手当てが終わっていた。