第93章 恋した記憶、愛した事実《14》家康side
教えられない…………?
「…………何故です?」
「信長様に言われているからな。光秀と政宗、三成に聞いても、誰も陽菜のことは教えない筈だ」
「なら、家臣や女中に……」
「お前の記憶がないことを知っている家臣と女中は、ごく一部だ。下手に全員に伝えて、変に不安を煽りたくないからな…。ちなみに知っている奴らに聞いても、家康には一切答えるな。と信長様がきつく念押ししている。聞いても無駄だぞ。」
「…………」
武将達だけでなく、まさか家臣や女中にまで根回ししているとは思わなかった。
ここまでされていると、誰かに聞く。というのはやめておいた方がいいかもしれない。
「陽菜自身について知りたかったら、お前が陽菜に直接聞け。俺らが話してやれるのは、陽菜に関わっていることだけだ。」
「……関わっていること……?」
「姉の香菜のことや、陽菜がお前の教え子だった。っていうことだけだ。陽菜がどういう奴なのかは、お前がしっかり陽菜と話をしたりして判断しろ。」
「……わかりました………」
ここまで言われてしまっては、俺自身があの女と話をして、情報を得るしかないみたいだ……。
仕方無いと思い、はぁ…と、秀吉さんに気づかれないように、小さく息を吐く。
そのとき
「家康様、新しい褥をお持ちしました。」
襖の向こうから、女中が声をかけてきた。