第93章 恋した記憶、愛した事実《14》家康side
秀吉さんの言葉に耳を疑う。
「……妹………?」
「正確には義理の妹だ。二日前に俺の妻は『香菜』って信長様が言っていただろ。香菜は陽菜の姉だ。」
「……………あの子には姉がいるんですか…」
一つ増えた情報を、頭のなかに入れる。
「妻ってことは、秀吉さん祝言挙げたってことですよね?」
「梅雨入りする前にな。ついでにいうと、お前も居てたぞ。」
「……すみません…全く覚えてないです…」
何も覚えていないから、申し訳なく俺は答える。
「まぁ、姉妹に関する記憶がないから仕方ないさ。あぁ…あと半月前に子供が産まれてる。お前も会ってるぞ。」
「は?子供…?」
「頬つついてたぞ。柔らかいって言いながらな。」
「……そう…ですか……」
これには流石に驚く。まさか秀吉さんが、祝言だけでなく、父親になっているとは……
そして、俺が赤子の頬をつつくとか……想像もつかない……
だが、それよりも………
「………さっきから、その『香菜』っていう姉の方の話しかしてませんけど……」
俺が知りたいのは『陽菜』のことで、姉の『香菜』ではない。
「陽菜のことをなんでもいいから教えろ。って言っただろ。だから、姉がいることを教えたじゃないか。」
「いや……まぁ、そうですけど……そうじゃなくて…」
「家康」
聞きたいことがあるのだが、秀吉さんの有無を言わせない声が、それを遮る。
「悪いが陽菜自身のことは教えられない」