第92章 恋した記憶、愛した事実《13》
家康の部屋を出て、三成くんと桶に水を汲みに行くため、廊下を歩いていると
「……申し訳ございません、陽菜様……。陽菜様に仕事を増やしてしまい……」
「ううん!!謝らないでっ…!三成くんのおかげで、少し緊張も解れたから!感謝してるぐらいだよ!」
両手で桶を持っているから、首を左右に振って、三成くんにお礼を言う。
「……感謝…ですか……?」
「…うん……家康が私のことを忘れてから、家康に会うのがすごく恐くて緊張しちゃってね……。」
昨日は秀吉さんと政宗が居たから、家康と必要最低限の会話も出来たし、手当ても出来た……。
でも、今日は一人だったら、話せるかな……手当てさせてもらえるかな……って、ずっと不安が付きまとっていた……。
「…廊下で三成くんたちに会うまで、不安と緊張でいっぱいだったから、三成くんと家康のやり取り見てたら、不安もどこか行っちゃったし、緊張も解れたの。だから、ありがとう…。」
三成くんからしたら、ドジをしてしまったことでお礼を言われても嬉しくないかもしれないけど、それだけ今の私には、あのやり取りは気持ちをだいぶラクにしてくれた。
「そうでしたか。陽菜様のお役にたてて何よりです。……ですが陽菜様、緊張することはありません。家康様自身は何も変わられていませんから。」
「…え……?」
家康自身は変わっていない……?