第92章 恋した記憶、愛した事実《13》
三人で部屋に入ったのはいいものの………
「……………」
「家康様!お怪我の具合はいかがですか?何か私に出来ることがありましたら、なんなりとお申し付けください!」
ものすごく不機嫌な顔をした家康と、その家康とは対称的に、ものすごくやる気に満ち溢れている三成くん。
「……あるよ…お前にしか出来ない重要なこと……」
「っ!!はいっ!一体何でしょうか!!」
家康のその言葉に、目をキラキラと輝かせている三成くん。
「今すぐこの部屋から出ていけ」
「こら!家康!仲良くしなさい。と、いつも言っているだろ!」
「家康様!出ていってしまっては、家康様のお役にたてません。この三成、怪我の手当てでも何でも致します!まずは手を清めて……!」
「ちょっ…!何すんの!!」
「三成くん!!水が飛び散ってる!!手当ては私がするからっ……!」
桶の水で、勢いよく手を洗う三成くん。激しく手を動かしているから、桶に入ってる水が家康の方へかなり飛び散っている。
「おや?おかしいですね。何故こんなに褥が水浸しに?今すぐ拭きま…あ。」
「わっ!溢すな!!お前は、もう何もするな。」
「いえいえ。何かさせてください。あ、家康様の夜着も濡れていますね。今すぐお着替えを」
「それぐらい自分で出来る。……ったく…どうしたらこんなに水浸しにできるのか知りたいよ……」
三成くんの腕が桶に当たってしまい、桶を倒して褥が水浸しに……。ここまで水浸しになったのを、不思議そうに見ている三成くんと、かなりうんざりした様子の家康。みかねた秀吉さんが、はぁ……と一つため息を吐いた。
「家康も三成も落ち着け。とりあえず、家康は着替えだな。陽菜は、新しく桶に水を入れてきてくれ。三成は、女中に新しい褥を用意するよう伝えろ。俺はここを片付けておく。」
「うん。じゃあ入れてきます……」
「秀吉様……申し訳ありません。」
片付けを秀吉さんにお願いして、私と三成くんは部屋を出た。