第92章 恋した記憶、愛した事実《13》
家康の部屋に向かっている途中
「陽菜、おはよう」
「おはようございます、陽菜様。」
「え?……あ、秀吉さん、三成くん。おはよう」
廊下で、秀吉さんと三成くんにバッタリ会った。
「家康の部屋に行くんだろ?俺らも家康に用がある。一緒に行くか。」
「あ、うん。一緒なのは助かるよ。……やっぱり緊張しちゃうから……」
「……そうか。」
昨日、一緒に居た秀吉さんは、手当てをさせてもらえるまでのやりとりを知っているから、少し悲しそうな表情をして、私の頭を撫でた。
「……三成くん、その本は?」
ふと三成くんの手元に目をやると、山積みになった数冊の本が。
「はい。家康様がお取り寄せされた医学書です。本日、届きましたので、家康様にお渡ししようと。あとは療養中に退屈しないように、いくつか本もお持ちしました!」
「そ、そうなんだ……」
三成くん……ものすごくキラキラした笑顔で話しているけど、家康の怪我はそこまで長引くものじゃないよ……
そのことを言うか少し悩んだけど、キラキラした笑顔を前にすると言えない……。
「ほら。立ち話もなんだし、行くぞ。」
秀吉さんに声をかけられて、私たち三人は、家康の部屋へと向かった。