第88章 恋した記憶、愛した事実《9》
陽菜は、あと数歩で、家康の部屋に着くというところで立ち止まり………
「………(なんて言って部屋に入れば……)」
昨日、逃げ出すように部屋を出たから、なんて声をかけていいか悩んでいた。
とりあえず、失礼しますが妥当?
で、入ったら昨日の謝罪……というより、そもそも部屋に入れてくれるのか……
いろいろ考えていると………
「陽菜、何してんだ?」
「部屋に入らないのか?」
後ろから声が聞こえ、振り替えると……
「……政宗、秀吉さん………」
政宗が重箱を持っていて、秀吉さんはその横に並んでいた。
「何、突っ立ってんだ?」
「………その…なんて声かけていいか……」
昨日一緒にいた二人は、陽菜のその言葉で瞬時に悟り………
「今までどおりのお前でいればいいだろ。」
「そうだな。ほら、行くぞ。」
「わっ!?ちょっ……!秀吉さん押さないで!」
ぐいぐいと秀吉に背中を押され、陽菜が立ち止まっていた場所が、数歩の距離だったため、一瞬で家康の部屋の前に着き
「家康、入るぞーー!」
政宗が声をかけると同時に襖に手をかけ、勢いよく襖を開けた。