第88章 恋した記憶、愛した事実《9》
昨日、泣きじゃくる私を、秀吉さんが部屋まで送ってくれて……
信長様は、家康が休んでいる部屋に行き、秀吉さんも私を送ると、家康の部屋へと引き返した。
すぐにお医者様を呼び寄せて、家康のことを診てもらい、終わるとすぐに信長様と秀吉さんが、私の部屋へと来てくれて………
家康が、私とお姉ちゃんの記憶を失っていることを教えられた。
そして
「明日から、貴様は家康の手当てに専念しろ。これは命令だ。」
「え?…でも………家康は………」
今の家康からしたら、私のことは見ず知らずの女だし、目が合って、すぐに手を振り払ったから、かなり警戒している気がする……。
そんな私に手当てされるのは、すごく迷惑なことなんじゃ………
「医者によると、頭を打ったことで、一時的に記憶が無くなったのではないか。と言っていた。そして、何かのきっかけで思い出す可能性もあるともな…。家康に思い出してほしければ、怪我が完治するまで、貴様は家康の手当て、そして身の回りの世話をしろ。」
「……わかりました…。」
家康の怪我はもちろん心配だし、信長様の言うとおり、手当てしているときに、少しずつ思い出すかもしれない。そのことを期待をして、静かに返事をする。
だけど次の言葉で
「それと、家康との祝言だが、一旦保留にする。」
え………?
心臓が、ドクッ……と騒ぎだす……