第86章 恋した記憶、愛した事実《7》
バタバタバタ…………!!!
どこに向かっていいのかわからず、とりあえず、家康の休んでいた部屋から、遠ざかりたくて廊下を走る。
「おいっ!!陽菜っ!待てっ!!!」
後ろから聞こえる秀吉さんの声。
いつもなら、「廊下は走るな。」って注意するけど、それどころじゃなく、珍しく秀吉さんも走ってくる。
だけど、私はひたすら廊下を走る。
「(………なんで……?)」
家康の帰りを待っていた……
帰ってきたら、笑顔で「おかえり」と「ただいま」を言い合って……
抱きしめて、抱きしめられて……
口づけもいっぱいしあって……
視察にいく前日みたいに愛してほしかった……。
だけど……
――――
『あんた……誰?』
――――
思ってもみなかった言葉。
何がどうなってるのかわからなくて、廊下を走っていると
ドンっ!!
「…っ!」
ガシッ!!
俯いて走っていたから、誰かにぶつかって、よろけたところを、腕を掴まれて、転けるのを防いでくれた。