第86章 恋した記憶、愛した事実《7》
「何をしている。」
その声に、ゆっくり顔をあげて
「……信長様……」
信長様の凛とした表情。
そして目が合った瞬間……
「………ぁ………っ……くっ…………」
「…?……陽菜…?」
自分が思っていたことが出来ず、誰?と言われたことがショックだったのか……
あの冷たい目で見られたのかショックだったのか………
わけがわからなくなり………
みるみる涙が溜まりはじめて……
「……っ……くっ……ぅ……ぁ……あ、………わあぁぁぁっっ!!」
子どものように泣きじゃくった。
自分のなかの何かが崩れたのか、周りの目も気にせず、
「……くっ……うっ……あぁ……!い、いえっ……や……家康っ!!!」
家康の名前を言いながら
信長様の胸を借りて
泣き続けた………。