第86章 恋した記憶、愛した事実《7》
家康が視察から帰ってきた翌朝
何かあったら、すぐに連絡できるように、家康が戻ってからは、ずっと傍にいるけど………
家康は、まだ目を覚まさない。
手当てをし直して、新しい包帯を巻いていくと……
「陽菜。入るぞ。」
声と同時に襖が開く。
「秀吉さん、政宗………」
「家康は、まだ起きないか……」
「……うん。」
「陽菜。握り飯持ってきたから食っとけ。お前も倒れたら、大変だ。」
「…ありがとう…。包帯、巻終わったら頂くね。」
手早く巻終えて、手を洗ってから、政宗のお握りを頂く。
「陽菜……夜は休んだのか?」
「少しだけ、仮眠はとったけど……。でも、何かあったら、すぐに対応できるように、ずっと起きてたよ。……あっ!現代にいたとき、夜も働いてる日があったから、こういうのは慣れてるの!」
新人だったから、夜勤の日数も多かったし、これぐらいなら大丈夫なのは本当のことだし。
「なら、飯食ったら少し休め。家康が目覚めたら、すぐ報告する。」
「大丈夫だよ!家康が目覚めるときに、傍にいて、ちゃんと安心したいから……」
「でもな……」
「家康が目覚めたら、誰かと替わってちゃんと休むよっ!!だからっ……!」
自分の目で、家康が起きるのを確かめて、心から安心したい。必死に秀吉さんにお願いすると……
「……わかった…。無理だけはするなよ……」
仕方ないな……と言って折れてくれた秀吉さん。
お握りを完食して、手を拭いたら、冷たい家康の手をまた握る。
昨日よりは冷たさはマシになったけど、まだ冷たい。
「……家康…」
温めるように、ぎゅっと強く握りしめる。