第9章 動き始めた恋心〈7〉家康side
家臣達に明日の策を伝え、救護用の天幕に行きいくつか指事を出して、ようやく家康は自分の天幕へ戻った。
明日は早い、ほんの少しでも体を休めようと横になって一息つくと、先程の行動を思い出した。
「~~/////」
手のひらで真っ赤になった顔の目元を覆った。
「なんであんなことしたんだ…」
陽菜の唇に触れた手をじっと見る。
『…い、いえや、す…』
陽菜に呼び捨てで名前を呼ばれて、胸が高鳴った理由
「さすがに、気づいた……」
――――――
―――
『優しく教えなくて大丈夫です!』
二回もつっかかってきたけど
『ここがわからなくて…』
勉強熱心で
『おかえりなさい!』
笑顔で出迎えてくれて
『…い、いえや、す…』
名前を呼んでくれた
少し気が強いとこもあって、根性あって、根は真面目で勉強熱心で
些細なことでも素直にお礼を言うし
笑うと胸が高鳴って落ち着かなくさせる…
「好きになるに決まってるだろ…」
しかし、自覚したら、自分はこの温もりを求めていいのか悩んでしまう。
それよりも陽菜は自分のことを『師』としてしか見ていないのではないか…
だとすれば陽菜とどうこうなど叶わないのでは…
家康はそんなことを考えながら、眠れない夜を過ごした