第85章 恋した記憶、愛した事実《6》
家康が視察へ行って10日。
「可愛い~♡」
お姉ちゃんとも会えるようになったから、今日は秀吉さんの御殿にお邪魔している。
「名前は?決まったの?」
「うん。『秀和(ひでかず)』」
「秀和くん~。いい名前、つけてもらったね~♪」
布団の上で、スヤスヤ眠る可愛い甥っ子に、小声で話しかける。
「名前の由来は?」
「秀吉さんの『秀』は使いたかったんだ。『和』は平和からとったんだけど、もともとはおだやかって意味があるんだって。だから、秀吉さんと一緒に、これから平和な世を築いていって、おだやかな人柄であって。っていう意味を込めたの。」
「へぇ~。素敵だね!」
それに、秀吉さんとお姉ちゃんの子だから、すごく優しい子になるだろうな。
小さい手をキュッと握って眠る秀和くん。
眠っているところしか見たことがないから、まだどっちに似ているかはわからないけど、髪色は秀吉さんと同じ。
「そういえば、陽菜。家康さん戻ってきたの?祝言まであと半月だよね……」
「ううん。まだ……。昨日、雨が降ったから、どこかの川が増水して帰れないのかな……」
文とかも届いてないから、かなり不安になる。
視察先で何かトラブルがあったのか……時間がかかってるだけなのか……
無意識に、はぁ…と重たいため息を吐くと、お姉ちゃんに頭を撫でられる。
「さすがに祝言も近づいてるから、そろそろ戻ってくるんじゃない?」
「……だといいんだけど………」
そのとき