第83章 恋した記憶、愛した事実《4》
「あまり擦ると目が腫れるぞ。」
「……ちゃんとあとで冷やしますよ。」
うっすら瞳に涙の膜が貼ってるが、ゴシゴシ擦ったから涙は止まった。
「そうか。ならば、このあとは碁の勝負だ。少しは強くなっただろうな?」
「う……三成くんに教えてもらってるんで、少しはマシになってきてると……思いたいです……」
安土城でお世話になってる間、世話役の仕事はしているけど、お姉ちゃんも秀吉さんの御殿に居てるし、話し相手がいないため、退屈しないようにと、信長様から碁に誘われた。
初めてしたときは、散々な結果だったけど、合間に三成くんに教えてもらい、少しずつ碁のルールがわかってきた。
夕餉のあとに、天主で対局して、いつも私が負ける。だけどそのあと、信長様に指導してもらって、また対局する。それが、安土城へ来てからの日常になった。
女中さんが用意してくれた碁盤を挟んで、信長様と交互に打ち合っていく。
ぱち、………ぱち、ぱち………
碁石を打つ音が広間に響く。
しばらくして………
「………負けました。」
打つ場所が無くなった私の負けが確定。
「なかなか、面白い手だったぞ。」
「そうですか?それは良かったです!」
「ここの手だが………」
信長様から、さっきの対局のおさらいをしていると、
「信長様、こちらでしたか……」
秀吉さんが、襖を開けて、広間に入ってきた。