第83章 恋した記憶、愛した事実《4》
「あの、信長様……本当にありがとうございます!」
「なにがだ。」
「信長様のおかげで、私もお姉ちゃんもこの時代でやっていけてます。この時代では身寄りがないのに、信長様ゆかりの姫という後ろ楯までしていただいて……それに、家康との婚姻も認めてくださって、ありがとうございます。」
深々と頭を下げて、信長様に感謝の想いを伝える。
「香菜も同じことを言っていたな。」
「えっ?お姉ちゃんも?」
信長様の言葉に、パッと頭を上げる。
「身籠ったのがわかって、祝言を挙げるのが決まった翌日に、天主に来てな……貴様と全く同じことを言っていたな。あとは、最後に謝罪もしていた。」
「謝罪……ですか?」
「あぁ。よくしていただいたのに、祝言前に先に身籠ってしまってすみません。とな。そんなことは気にしてないと言えば、面食らった顔をしていたな。」
お姉ちゃんのその顔を思い出したのか、ニヤニヤと笑っている信長様。
「それに、礼を言うのは、俺の方だ。」
「え……?どうしてですか?」
信長様にお礼を言われるような覚えはないんだけど……
「貴様等が来てから、奴等の士気も上がったし、秀吉は香菜との祝言が決まってから、今まで以上に仕事にも精を出している。貴様も、家康と婚姻を結び、徳川と織田の繋りをさらに深くした。……まさに幸いを呼び込んできたな。貴様等は姉妹は。」
「…信長様……」
信長様の温かい言葉に、涙が溜りはじめる。
すると、信長の手がさっきみたいに、頭に伸びてきて
ポンポンと撫でられた。
「貴様等、姉妹はよく泣くな。」
「すみま、せん……」
急いで目をゴシゴシと擦り、涙を拭き取る。