第83章 恋した記憶、愛した事実《4》
家康が視察に行って3日。すなわち、陽菜が安土城へ来て3日。
陽菜は………
「うーん………………」
「貴様、早くしろ。」
「ま、待ってください!え、えっと……これにします!」
「ほう……なかなか良いではないか。」
「あ、ありがとうございます…。でも信長様。もう嫁入り道具の家具は全部選びましたよね……なのに、なんでまた……」
「こういうのはいくつあっても足りんだろう。」
「いえ……一つで充分なんですが……」
家康との祝言が決まってすぐに、嫁入り道具は全て信長様が用意してくれた。
だから、これ以上選ぶことはないのだけど……
「前に選んだやつは、さほど大きくないだろう。すぐにいっぱいになるぞ。……まぁ、前のやつで事足りるなら、これはいつか子どもが産まれたときにでも使え。」
「え!?は、はい……///」
信長様の言葉に、頬が熱くなる。
家康との子ども……もちろん、望んでいるし、数日前に産まれたお姉ちゃんの赤ちゃんを見て、尚更その気持ちは強くなったりした……。
熱くなった頬を冷ますように、手でパタパタと扇ぐ。
「まぁ、貴様等はまず祝言を挙げてからだ。」
そう言って信長様は優しく微笑み、大きな手で頭を撫でてくれた。