第82章 恋した記憶、愛した事実《3》
翌朝
「じゃあ、行ってくる。」
「行ってらっしゃい!気を付けてね!」
チュッ
家康の御殿に移り住んでから、部屋での、出掛ける前の『行ってきますのチュー』が日課になった。
初めてしたときは、家康の顔が真っ赤になって、狼狽えていたけど、今では平然としている家康の顔。
「(私はいつまで経っても、ドキドキするけど………家康は馴れたのかな…)」
それはそれで、少し寂しいな……。って思っていると、家康に腕を掴まれ……
ぽふ……
家康の腕のなかへと引き込まれた。
「家康……?」
「………陽菜も、気を付けて……」
「ん………」
家康の手が両頬を挟んで軽く持ち上げ、唇を触れあわせる。
「あ………ちょっ………んぁ…っ……///」
滑り込むように舌が入ってきて、すぐに舌が捕らえられる。
舌で歯列をなぞられ、口内を全て家康の舌で犯されると、唇が離れるときには、私の呼吸は上がっていた。
「はぁ……もう……///。なんで……」
「いつも俺は陽菜にされる度、心臓が煩いのに、陽菜は平気そうだからね……。お返し。」
初めて、家康の気持ちを知って、胸が高鳴る。
「家康の方が、いつも平気な顔してるから……慣れたのかと思った……」
「毎日されても、これだけは慣れないよ。」
もう一度、家康に抱きしめられ、軽い口づけをして、そろそろ出る時間のため、二人で玄関まで向かった。
「じゃあ、留守の間は頼んだから。」
「お任せください。」
「家康、行ってらっしゃい。」
玄関で家臣さんと女中さん数人でお見送りをして、家康は数人の家臣さんを連れて、視察へと向かった。
「では、陽菜様。城までお送りします。」
「あ、はい。お願いします。」
家康を見送ったあと、家臣さんに、安土城まで送ってもらい、私は家康不在の間は、安土城で寝泊まりすることになった。