第80章 恋した記憶、愛した事実《1》
「香菜様!!もうすぐですよ!はい!いきんで!!」
「うっ……ああぁ!……あぁ…!はぁっ…はぁっ…」
天井から吊り下がった紐を握りしめて、陣痛に耐えながら、少しずつ進むお姉ちゃんの出産。
この時代は、出産は女性の大仕事らしく、男性の立ち会い一切厳禁。
そして、出産の取り上げは、出産経験者たちによって、取り上げられるみたい。
出産経験もないし、助産師でもない私。
本来なら私も外で待ってる立場だけど、秀吉さんが立ち会えないため、お姉ちゃんに不安だから……と、立ち会いを頼まれた。
現代で看護学校で学んだり、患者さんや先輩たちに聞いた、出産の知識をなんとか引っ張りだしたが……出来ることは、お姉ちゃんの腰を摩ったり、汗を拭いたりするぐらいしかない。
「もうすぐ、産まれますよ!!」
「お姉ちゃん!頑張って!」
「く…う……あ、ああぁぁぁっ!!」
最後に、お姉ちゃんが力いっぱいいきむと……
……オギャアァァーーーー!!!!!
赤ちゃんの元気いっぱいの泣き声が、部屋中に響きわたり
「おめでとうございます!香菜様!!」
「秀吉様と香菜様そっくりの………」
赤ちゃんの顔を見て、お姉ちゃんだけじゃなく、私の目からも涙が零れた。