第77章 姉と世話焼きの勘違い ※R18
懐妊していない……?
「……は?」
思わず、間抜けな声が出る。目も口もぽかんと開いているだろう………
「いや、…陽菜と廊下で話してただろ?遅れて、それに体調も顔色も悪くて、家康に薬を調合してもらうって……」
「え…秀吉さん、あのときの聞いてたの?」
「途中からだが、たまたま聞こえて。香菜の必死な声に出るに出れなかったんだ。」
正直に話すと、香菜が褥から出て、文机の上に置いてある反物を手に取り、俺に見せる。
黒地に白糸で波模様、所々に赤いシャクナゲの花が織られている、きらびやかな反物
反物を見せられた意味が解らず、香菜に聞くと、クスクス笑いながら説明しだした。
「信長様が一月後に、織田傘下の大名達を、この安土城に集めて宴を開くでしょ。そのときの羽織を仕立ててほしい。って依頼を一月前に受けたんだけど……」
反物屋に行くと、信長様に似合うものがなく、反物屋の主人に仕入れてもらうようお願いしたらしい。
一週間程で入ってくると言われたが、職人の体調不良と、大雨で商品をなかなか届けることが出来ずで、香菜の手元に届くまで、思いの外時間がかかってしまった。と……
「信長様の反物がなかなか届かなくて、ちょっと焦ってたの。秀吉さん、宴の準備ですごく忙しくしてたから、これぐらいのことで相談すると、迷惑かけちゃう。と思って……。」
「じゃあ、遅れてるってのは、月のものじゃなくて……反物のことか?」
コクン。と頷く香菜に、秀吉は一気に身体から力が抜ける。
「家康さんにも、月のもの来てる?って聞かれて、陽菜も私も驚いたの…/// なんでそんなこと聞くのか聞いたら、顔色がかなり悪いから、薬の調合するのに、いろいろな可能性を考えてるからって言われて。ちゃんと来てるって言ったら、「やっぱり…」ってボソっと言ってたよ。」
「……顔色が悪かったのは…」
「依頼も引き受けすぎてたの。なかなか終わらない上に、信長様の反物が届かなくて、すごく焦って…。そこに、秀吉さんから針仕事は禁止。って言われたから、さらに焦っちゃって……。でも、私のことを心配してのことだったんだね…。ありがとう、秀吉さん。」
ようやく秀吉と香菜は、針仕事をしたい、させない理由がわかった。