第8章 動き始めた恋心〈6〉
「家康さん、この距離なのに、ありがとうございます。」
「…あのさ…」
「?はい」
「いつまで敬語と、さん付けなの?」
「へ?」
「秀吉さんや政宗さん、三成にもため口なのに、なんで俺だけ?」
「え?それは薬学教えてくれてる先生だし、ため口は失礼じゃないですか…」
「あんたの面倒一番見てるのは俺でしょ。いちいち畏まらなくていい。うっとうしいから。」
「え?でも、家康さん…」
「『家康』」
家康さんの指がチョンと
「!!!」
私の唇に触れる
「はい。練習。『家康』」
「(この状態で!?)」
ドキドキしながら
「…い、いえや、す…」
小声で、言うと
唇に触れてた指が離れ
「うん。そっちのがいい。」
目元を少し赤めて優しく微笑みながら、頭を数回撫でられた。
「(っ!笑ってるとこ…初めてみた!)」
初めてみた笑顔にドキドキする
「じゃあ、俺行くから、早く寝なよ。」
「え?あ、は……いや、うん…おやすみ…」
「おやすみ」
そう言って、家康は歩いて行き
陽菜は家康の背中が見えなくなるまで見送っていた。