第76章 お医者さんごっこ part2 家康side ※R18
「………ん……」
目が覚めると部屋は茜色に染まっていて、それだけで、今が夕刻頃だとわかる。
「(かなり身体…マシになったな……)」
身体の怠さはほとんどないし、熱はもう下がっただろう。
咳も元々そんなに酷くなかったから、あとは乾燥しないようにすれば大丈夫な筈。
額に置かれた手拭いを取り、家康は身体を起こす。
辺りを見渡すと陽菜の姿が見えない。
「(……帰った…?)」
いくら信長様に直談判したとはいえ、あまり遅くなるな。とか、秀吉さんあたりに言われたのかもしれない。
お礼を言いたかったけど、帰ったのかもしれないし、この調子なら明日には治っている筈だから、明日登城したときにお礼を言うか。
それより……
「……汗かなりかいたな…」
このままの方が身体に悪い。
夜着を着替えようと立ちあがり、腰紐を解き落とし、夜着を脱ごうと襟元に手をかける。
するりと肩から脱ぎ、鍛え上げられた肩甲骨が姿を現すと、
「家康、入るよ……えっ!?///」
陽菜の声が聞こえ、振り向くと、顔を真っ赤にした陽菜。
その手には、御膳を持っている。
「ああああの!ごごごごめん!!」
着替え中のときに入ってきて悪いと思ったのか、くるりと俺に背を向ける。
「……別に何度か見てるでしょ。」
「そ、それとこれとは違うの!!///」
……よくわからないけど、とりあえず着替えをして、終わると褥に座り、着替え終わったと陽菜の背に声をかける。
おずおずと身体ごと振り返る陽菜。
顔を赤くしたまま御膳を持って、ゆっくりと俺に近づく。
「……その姿で御殿内、うろついてたの?」
陽菜の恰好は『女医』姿。
俺以外、陽菜の綺麗な脚は、誰にも見せたくないのに……
この子は、そういうこと、わかっているのだろうか。
「あ、さすがにこの姿でウロウロしてないよ。女中さんたちに驚かれちゃうし。この部屋から出るときは、白衣は脱いで、服の上に着物着て行動してたの。お陰でちょっとモコモコしてたけど。」
続きの間で脱いでから、この部屋に入ってきた。と照れながら笑う陽菜に、とりあえず一安心。
俺とは意味が違うが、脚はさらけ出していない。