第76章 お医者さんごっこ part2 家康side ※R18
…カチャ、カチャ……
微かに音が聞こえて、ゆっくり目を開けて、音の方へ顔を向ける。
陽菜が俺に背を向け、御膳の用意をしている。
といっても、膳に乗っているのは、お粥と椀と匙だけ。それをなるべく音を起てないように気をつけて用意をしている。
陽菜が居なかった少しの時間、どうやら俺は眠っていたみたいで、陽菜は寝ている俺に気をつかって、静かに行動しているようだ。
「………陽菜…」
「あ、ごめん。また起こしちゃったね。お粥作ったから、食べれそうなときに食べてね。」
「…あ…うん……」
ゆっくり起き上がり、陽菜の行動を見る。
よく見れば、御膳だけでなく、薬を飲む用に水なども準備していた。
俺の看病を受けていたからか、陽菜の気配りのできる性格からか、かなり手際がいい。
だけど、用意が終われば陽菜は帰るだろう…
『帰れ』と、全く思っていないことを言っといて、帰ってほしくない。と思っている。俺が謝って、居てほしい。と言えば解決することなのに、捻くれた性格が邪魔をする。
「…そう言えば……家康、佐助くんに何か言ったの?」
「ケホ、……佐助?なんで?」
「お城に引き返してるときに佐助くんに会ったんだけど……家康が風邪ひいたって言ったら、『ぜひ現代の服を持って、家康公の願いを叶えて』って言われて…佐助くんがかなり念押ししてきたから一応持ってきたんだけど…」
「!?」
チラリと陽菜は、自分の横に置いてある風呂敷包みを見る。
佐助のやつ………俺は別に願ったわけじゃないんだけど………