第75章 お医者さんごっこ part1 ※R18
部屋に入り、パタンと襖を閉める。
チラッと家康の方を向くと、家康は私に背を向けたまま、文机に片肘ついてほおずえしている。
「(すごい怒ってる……でも、お願い叶えてくれたんだ……)」
白衣姿の家康。後ろ姿だからわからないけど、たぶん中の服も着物でなく、現代の服。
昨日佐助くんは、佐助くんがタイムスリップしたときに着ていた、緑色のシャツに黒い細身のズボンと白衣を持ってきてくれた。
これでお医者さん姿が見れるんじゃないか。って……
家康の姿に頬が緩むが、家康の纏っているオーラは不機嫌そのもの。急いで機嫌を直さなければいけない。
静かに家康に近づいて、家康の横に座る。
「家康?」
家康の顔を覗こうとしたら、プイと私とは反対側に顔向け、私に顔を見せないようにする。
「(…相当怒ってる……)」
もしかしたら、佐助くんから何も聞かずに、着替えさせられたかもしれないと思い、正直に話すことにした。
「あの、ごめんね……家康、薬作り得意だから、来世だと、家康はお医者さまのお仕事してるかなと思って…家康のお医者さま姿見てみたいなって話を佐助くんにしたの……この服も佐助くんに用意してもらって……」
ポツポツとこうなった経緯を話していく。
「こんなことに付き合わせてごめんね……。でも、お願い叶えてくれてありがとう。」
まだそっぽを向いてる家康。これは思っている以上に怒ってるのかもしれない……
「…あ、お願い叶ったし、着なれてない服だから、着物に着替える?その間、私出とくから……」
部屋から出るために、腰を上げようとしたとき
グイっ
「っ!?」
ぽふっ
「……陽菜はこの格好……見たかったの…?」
家康の声が、私の耳元に届いた。