第7章 動き始めた恋心〈5〉家康side
「あとは、一人一人に励ましておりましたよ。
優しく微笑まれて、まるで天女のようだと、皆言っていました。
なかには、織田家ゆかりの姫様にお近づきになることなど、そうそうないからと、ここぞとばかりに手を握ろうとする者もいましたね。」
「は?」
まさかの発言に目を見開く
「あ、もちろん握られそうになれば、違うことをお願いしておきました。
握ろうとした負傷兵達には、きつく注意しておきましたので」
「……そう」
なぜ陽菜はここまで注目を浴びるんだ…
戦場に女がいるのはかなり珍しいし、表上は織田家ゆかりの姫、注目を浴びるのは仕方ないのだが…
「(注目を浴びるのはそれだけが理由じゃない気がする…)」
「でも陽菜様の働きには驚きました。
他の救護兵達の初陣時はこうも動けなかった。と言うと、ここまで出来たのは家康様の指導のおかげだと、嬉しそうにおっしゃっていましたよ。」
え…?陽菜が?
そう言ってくれると、熱を入れて教えて良かったと思った。
口元が緩みそうになるのを、必死に堪え
「陽菜がもしここに来たら、もう休んで明日に備えてって言っといて。また様子を見に来る」
「承知しました。」
俺は明日の策を話し合うため本陣へ向かった。