第7章 動き始めた恋心〈5〉家康side
救護用の天幕に入ると、すぐに任してる奴のもとへ行く。
「状況はどう?」
「負傷者の怪我はもう終わっております。あとは、熱が出たり傷口が膿んだりしないかを、注意しながらになりますね。」
「そう」
勝ち戦だったから、そこまで怪我人は多くないが、初めての陽菜はそれでも大変だったんじゃないか…
「陽菜はどうだった?」
「かなり動かれていましたよ。
戦が始まるまでは少し不安げでしたが、負傷兵達が運ばれると、私や救護兵達に指示を仰いで手際よく手当てされていました。
最初、女子には酷なのではないかと思ってましたが、重症の怪我にも怯まず向き合っておりましたよ。」
「そう」
かなり頑張ったんだろうな。懸命に手当てしている姿が想像できる。
「それに女子は細かいところにも気がききますね。
血の匂いが充満すると、怪我人にはあまりいいものではないと思うから。と、こまめに空気の入れ換えや掃除をしてくださいましたよ。
そのおかげか負傷者の顔色もそこまで悪くないように思います。」
確かに、天幕に入ったとき、いつもみたいな血生臭い匂いがひどくなかった。
負傷者がそこまで多くないからと思っていたが、陽菜の気配りのおかげだったのか…