第71章 恋から愛へ《30》
「……陽菜…」
家康の羽織を掴んでいた私の手を、上から包むように触る家康に、ハッとする。
「あ、ごめん…迷惑かけてっ!……今、退くねっ!」
家康の膝から退こうと、腰を上げようとしたとき、家康の反対の手が私の腰に手がまわる。
「?家康…?」
顔を上げると、真剣な顔をした家康がいて、少し驚く。
「……俺も……もう少し陽菜といたいけど…昨日今日と陽菜と居れたから、満足してる。」
「家康……」
「それに、明日は登城するから、合間みて陽菜に会いに行く。軟膏も渡したいから」
「うん…」
「だから、そんな淋しそうな顔しないで。俺は陽菜の笑った顔がみたい。」
「んっ……」
触れるだけの軽い口づけを家康はして、腰にまわしていた手が離れ、頭を撫でられた。
「また、二人でどこかに出かけよう。」
家康も同じように、今日が楽しくて、もう少し一緒にいたいと思っていて、またデートしたいと思っていてくれて……
私と同じことを思っているのがわかって、安心した。
「うん。」
そう思い、家康が好きだと言う笑顔で返事をした。