第71章 恋から愛へ《30》
「そう…じゃあ、軟膏作っとくよ。作ったらすぐ渡す。」
「え?いいの?」
「うん。お弁当のお礼」
「ありがとう!」
くるっと振り返り、家康に抱きつく。
「(家康、優しいな…)」
最初は冷たい人かと思ったけど、実際はすごく優しいし、だんだん、その優しさに惹かれていった。
「(すごい…好き……)」
少しでも家康に伝わるように、陽菜はさらにギュッと抱きしめた。
少しずつ陽が傾き始め、デートの終わりが近づく。
「(まだ一緒に居たい……)」
だけど、今日は夕餉までには帰ってきなさい。と昨日の宴が終わったあと、秀吉さんにきつく言われた。
「(楽しかったから、余計に離れたくない。)」
「……陽菜…そろそろ帰ろうか。城まで送る。」
「……………うん……」
返事はするけど、家康の膝の上から、退きたくない。
無意識に家康の羽織を掴んでいた。