第71章 恋から愛へ《30》
舟を舟乗り場に戻し、荷物を置いていた木の根元に寄りかかる家康の膝の上に乗せられ、少し休憩する。
「家康の手おっきいね」
後ろから手をまわして、私のお腹の前で手を組んでいた家康の手を解き、自分の手と手のひら同士を合わせて、大きさを比べあう。
「そりゃあ、男だし」
「それもそっか。」
「陽菜の手は小さくて細いね。」
「家康のと比べると小さいけど、細くはないよ。それに荒れてるし…」
看護師の仕事をしていると、頻繁に手洗いと消毒をするため、看護師の職業病ともいえる。
仕事が終われば、ハンドクリームで保湿。お風呂上がりもすぐに保湿。出勤前も保湿。とにかく仕事中以外は常にハンドクリームで保湿をしていた。
私はまだ新人で1ヶ月半はこっちに居てたから、手荒れがそんなにひどくなかったけど、現代に戻って復帰した途端、手荒れはひどくなっていった。
こっちに戻って、最初にタイムスリップしたときの鞄に、ハンドクリームがあったから、保湿しているけど、それももう無くなりそう。
家康と手を繋ぐとき、カサカサして痛くないかな。といつも思う。
「こっちに戻ってきてから、少しずつマシになってるんだけど、持ってた保湿するやつが、もう無くなりそうで、ちょっと悩んでる。」
昨日も城下で、ハンドクリームみたいに保湿するものが売ってないか探したけど、売っていなかった。