第70章 恋から愛へ《29》家康side
舟の縁に手を置き、水を必死にかけてくる陽菜。
だが、手が滑って体勢を崩し、危うく湖のなかに落ちそうになるところを引っ張り、その反動で舟が揺れ、陽菜を腕のなかに閉じこめたとき、舟の揺れも弱まっていき、ほどなくして揺れは止まった。
「大丈夫……ごめんなさい。あ、すぐ退くね。」
結構強く引っ張ったから、勢いがついて、陽菜は俺に体を預けている体勢。
ギュッ
「このままでいい。」
「でも…」
「いいから黙って」
陽菜の柔らかい唇に触れ、掠めとるような口づけをする。
「っ!いえ…んっ!」
すぐに、深い口づけに変え、舌を絡ませ、陽菜との口づけに夢中になる。
チュッ…クチュ、クチュ……
「……ぁ……いえ、や……ん……」
「………陽菜……」
静かな湖の上では、俺たちの口づけの音がやけに大きく聞こえる。
「……はぁっ……家康………」
唇を離し、俺を見上げてくる陽菜。
トロンとした瞳、紅潮した頬、口から洩れる吐息
その表情に、欲情しそうになる。
「………陽菜…」
さらさらの黒髪に指を通し、掬いあげ、髪の毛に口づけて
「………んっ…ん……」
また陽菜との口づけに夢中になっていた。