第70章 恋から愛へ《29》家康side
「じゃあーん♪」
陽菜が重箱の蓋を開け、中を見ると
「(……すごい…)」
重箱には、色とりどりのおかずが敷き詰められている。
2種類のお握り、根菜の煮物、焼き鮭、おひたし、あとは見たことないおかずもある。
たぶん来世での料理だろう。
「こんなにも作るの大変だったでしょ?無理しないで良かったのに…」
「無理はしてないよ。でも、魚も鶏も捌けないし、釜戸とかの使い方もわからないから、料理番の人に、捌いてもらうのと火加減だけは調整してもらったの。でも、味付けや切ったりしたのは、全部私がやったから。」
はい。と箸を渡してくれる。
「いただきます。」
手を合わせ、煮物の人参を口に入れる。
「…どうかな……?」
少し不安そうに聞いてくる陽菜
「……美味しい。」
口に広がる辛味も俺好みの辛さだ。
「ほんと!?良かったぁ~…」
陽菜はホッと胸を撫で下ろして、自分も箸を持ち、一緒に食べていく。
食べながら、見たことない料理が何か教えてもらう。
「これは“きんぴらごぼう”で、こっちは“玉子焼き”なんだけど、フライパンがないから、お鍋でなんとか頑張って作ったの。来世では、四角い形のフライパンに、何回もこうやってクルクルしていって……」
言いながら、その“ふらいぱん”を指で四角を表し、『玉子焼き』という料理の仕方を、両手でやっている。
その姿も可愛く微笑ましい。
「こっちはごま塩だけど……このお握りは?」
「それは肉味噌のお握り。鶏肉をそぼろ状に切って、砂糖とお醤油とお味噌と唐辛子入れて煮たせたものを具にして、握ったの。家康用には唐辛子多くして、鷹の爪も細かく切って入れてるよ。」
「……すごいね。」
陽菜の料理の腕前に驚く。政宗さんほどじゃないと言っていたけど、政宗さん並の腕前だ。
どれも美味しくて、箸がいつも以上に進み、俺達はお弁当を平らげた。