第70章 恋から愛へ《29》家康side
陽菜が起きたあと、二人で朝餉を食べ、陽菜は厨でお弁当作り。
俺はお弁当が出来るまで、書簡整理をしていた。
お弁当が出来上がり、陽菜が身仕度を整え、手を繋いで湖まで向かった。
「家康!湖!」
湖の方に指を差し、単語だけで会話をしてくる陽菜。
手を離して、湖の方まで走っていく。
「ちょっと…湖に落ちないでよ……」
落ちないよ!と叫んでいるけど、あの様子だとなんだか不安になる。
持っていた敷物とお弁当を置いて、陽菜のところまで、走って近づくと、陽菜は湖を覗きこむように見て、手を湖に浸けていた。
「冷たくて気持ちいー!それにすごい澄んでてきれいだね!」
湖から手を出した陽菜に、俺は懐から手拭いを出して、濡れた陽菜の手を拭く。
「これぐらい普通でしょ。500年後は違うの?」
「うーん……ここまで澄んでないよ。でも小さい頃に一度見ただけだから、あんまり覚えてない。」
「そう。後で舟に乗る?」
「乗りたい!」
目をキラキラさせて、勢いよく頷く陽菜に、俺の頬も緩む。
「じゃあ、先に腹ごしらえにしよ。陽菜が作ったやつ食べるの楽しみだから」
「うん。お口に合うといいんだけど。」
「陽菜が作ったやつなら、なんでもいいけど。」
そう言いながら、陽菜の冷たくなった手を握り、敷物を置いたところまで、俺達は歩いた。