第70章 恋から愛へ《29》家康side
空が白みだした頃、
「……………ん……」
家康は目を覚ました。
そして、左腕に心地よい重みを感じ、そちらを見る。
腕枕をされ、眠る陽菜。規則正しく寝息をたてていて、まだ起きそうにない。
陽菜の寝顔を見て、
「(………昨夜とは大違いだ……)」
昨夜の情事を思い出す家康。
昨夜は女の顔をして、この褥の上で乱れ、喘ぎ、俺を欲情させていた陽菜。
だが、この寝顔はなんだか幼く見える。
「(まぁ、この顔も可愛くて好きだな…)」
陽菜の綺麗な黒髪を右手で撫でながら、本人には決して聞かせれない言葉を、心の中で呟く。
モゾモゾと身体を動かす陽菜に、慌てて、手を引っ込める。
「…んぅ……………ぃぇゃ……………スー…」
また寝息をたて、スヤスヤ眠る陽菜。
「…まだ早いし、ゆっくり休みな。」
まだ、起きなさそうな陽菜に、小声でそう言って、髪をもう一度撫で、陽菜のこめかみ辺りに口づけを落とす。
陽菜が起きるまで、日課の鍛練をしようと褥から出ようと思ったが……
「……んぅ~………………」
ギュッ………
「…………」
「(……嘘でしょ……///)」
陽菜がまたモゾモゾと動き、家康の腰あたりを掴み、ぬくもりを求めるかのように、家康にひっつく。
「……スー…スー……」
「(…動けない……しかも……)」
ひっついているから、陽菜の柔らかい膨らみが、家康の身体に触れ、それだけで家康のものはムクムクと反応し出す。
「(……政務のこと考えよ……)」
このままではまずいと思い、寝起きでまだ覚醒しきれてない頭を無理やり働かせ、家康は陽菜が起きるまで、仕事のことを考えていた。