第7章 動き始めた恋心〈5〉家康side
「手当てするんで、羽織脱いでもらっていいですか」
羽織を脱ぎ、手当てをしてもらう。
「はい。出来ましたよ」
「……どうも」
お礼を言ったら、陽菜は嬉しそうに微笑んでいる。
手当てが終わったので、羽織に腕を通していると
「家康さん、頬のところも怪我してますよ。」
「え…?」
「うっすらですけど、刀の先が擦ったんですかね。一応、薬塗っときますね」
それぐらいの傷なら別にいい。と断ろうとしたが、
陽菜はすでに指先に少量の薬を取り、近づいて、俺の頬に細い指でチョンチョンとつける。
あまりの顔の近さ
軽く上目遣いした、くりっとした瞳
無意識にほんの軽く開いた口
頬に触れた細い指
それらが、家康の何かをさらに突き動かし
「っ!!!!//////」
「え?」
顔を真っ赤にしてガバッ!と家康は立ちあがり
「~~~~…怪我した兵達の様子見てくる!!」
と言って急いで天幕から出ていった。
天幕を出て
「なんなんだよ……」
真っ赤な顔でボソリと呟き、胸元を抑える
「(なんで、陽菜の行動とかでこんなにも掻き乱されるんだよ…)」
この気持ちが、何かわかる気がするがそれに気づきたくない。
そんな葛藤を胸中でしながら
ズカズカと大股早歩きで救護用の天幕へ向かっていた