第66章 恋から愛へ《25》
次の瞬間
「…っ」
家康の息を飲む音が聞こえ、私の手を離して、勢いよく抱きしめられた。
「!?いっ、いえや…」
「……良かった…」
家康の名を全部言いきる前に、家康の安堵した声が耳元で聞こえた。
その声を聞いて、胸がトクンと高鳴り、私もゆっくりと家康の背中に腕をまわして、ギュッと抱きしめかえした。
しばらく家康と抱き合っていると、ゆっくりと家康が体を離した。
「…俺も遅くなったんだけど、陽菜に渡すものがあるんだ……」
家康が私に渡すもの?なんだろうと思い、家康が懐に手を入れる様子を見る。
何かを取り出そうとしたが、ピタっと手の動きを止め
「手、出して。」
先ほどと同じセリフを言われ、私は言われた通り、手の平を上にして片手を出した。
家康は、さっきと同じように私の手をとり、懐から手を出して、私の手の平の上に何かを置いて、ゆっくり手を離す。
家康の手が離れたから、自分の手の平を見ると
「…こ、れ……」
薄黄色の大ぶりの花の周りに、山吹色の小花が3つ付いている髪飾りが置かれていた。