第64章 恋から愛へ《23》
私も渡さないと、と思ったら
「…じゃあ、俺行くから。陽菜も戻ってきたばっかりだし、宴まで少し休んでな…」
家康が立ち上がろうとするのを見て、今逃すと渡せなくなると思い、
「あの!ちょっと待ってて……」
立ち上がろうとした家康を止め、急いで立ちあがり、文机の上に置いた鞄の中から、2つの御守りを取り出す。
「(こっちは、汚れて渡せないから…)」
山吹色の御守りは鞄に入れ、黄色地で翡翠色で模様が織り込まれた御守りを手に持ち、家康の前に戻り座る。
「(どうしよ…緊張する……)」
今まで、手作りのものを異性にあげたことがない。
初めてあげる相手が好きな人。
手が震える。
「?…陽菜?」
震える私の手を見て、心配そうに声をかける家康。
「(落ち着け!私!)」
勇気を出して!!
「あの…これ!!」
ズイっ!!
目を瞑って家康に御守りを押し付けた。