第63章 恋から愛へ《22》家康side
「ご、ごめんね!久しぶりだから、つい話が盛り上がっちゃって…」
遅れた理由は俺の思っていた通りのものだった。
シュンと落ち込む陽菜に、湯冷めして風邪でもひいたら大変だから、部屋に入るよう促し、陽菜と一緒に部屋に入る。
3ヶ月前と同じ状態の部屋に陽菜は驚いたのか、なんで?と聞いてきたので、信長様が、そのままの状態にしておくように。と女中に伝え、女中たちが毎日掃除をしていたことを教えた。
信長様と女中たちの気持ちが嬉しかったのか、陽菜はニコニコしながら、文机に近づく。
先ほども持っていた珍妙なものを文机の上に置き、俺の羽織を、衣桁に掛け乾かす。
そのままでもいいと言ったが、自分のせいで濡れたし、少しでも乾かさないといけないから…と言ったので、陽菜の気がすむようにさせた。
「それより、足見せて。怪我してないか診るから」
「大丈夫だよ…」と陽菜は言うが、有無を言わさない俺の言い方に、陽菜はしぶしぶ俺の前に座り、足を出した。
陽菜の踵を軽く持ち上げ、自分の足の上に陽菜の足を乗せ、怪我の状態を診る。
ひどい怪我はないが、擦り傷だらけ。
一応薬塗っておくことにし、薬箱から薬を取出し陽菜の足に塗り、包帯を巻き、両足の手当てをする。
「ありがとう…」
「別に、これくらいのことで、お礼言わなくてもいいから」
言いながら、片付けをする。
もう少し、マシな言い方が出来ないもんかと、自分で自分が嫌になる。
「「………」」
自分の言い方のせいで、会話が止まり、気まずい……
片付けもすぐ終わり、薬箱の蓋をパタンと閉める。
手当てが終わって、陽菜はゆっくり休みたいかもしれない。
用だけすぐにすまそうと思い、
「…いっ」
「陽菜」
……………
陽菜の言葉を遮ってしまった。