第63章 恋から愛へ《22》家康side
自分の部屋に行き、薬の調合をする。
陽菜が痛そうにもしてなかったし、血も出ていなかったと思うが、どの怪我にも対応できるように、3種類ほど薬を作った。
「…そろそろ行くか……」
薬箱を持ち、陽菜の部屋に向かう。
途中、秀吉さんに会い、ポンっと肩を叩かれた。
「良かったな!」
「…それ、さっき香菜にも言われました。」
そうか。と秀吉さんも嬉しそうに笑う。
「陽菜が帰ってきたから、香菜に想いをぶつけてくる。」
その言葉に俺は驚く。
戦から帰ってから、秀吉さんと香菜の雰囲気は、戦の前とは違い、少し甘い雰囲気を纏っていたからだ。
「くっついたんじゃなかったのか?」と思った俺の考えを読み取ったのか、秀吉さんは
「『守る』とは言ったけど、たぶん香菜は『仕事』だと思ってるからな」
じゃあな。と秀吉さんは湯殿の方へ歩いていく、俺も陽菜の部屋に向かった。
「(想いをぶつける…か……)」
陽菜が居なくなって、何度も後悔した。
褒美を渡さなかったこと
勉強すると約束したのに、その時間をなかなか作れなかったこと
想いを言えなかったこと
「(俺の自惚れじゃなかったら、陽菜は…)」
―――
『……家康に……会いたい、から…飲まなかったの…///』
―――
咳止めの薬を飲まなかった理由が、俺なら……陽菜も俺のこと……
そう考えていると、いつの間にか陽菜の部屋に近づいていた。
「(…このことは一旦考えるのをやめとこう)」
頭の中を切り替えて、
「陽菜、いる?」
声をかけた。